症例報告
原発巣と転移巣で異なる抗がん剤の反応性を示した肺癌による転移性脈絡膜腫瘍の1例
谷口 隆英
1
,
橋田 徳康
1
,
浅尾 和伸
1
,
丸山 和一
1
,
西田 幸二
1
1大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学)
キーワード:
転移性脈絡膜腫瘍
,
ALK阻害薬
,
微小環境
,
metastatic choroidal tumor
,
ALK inhibitors
,
microenvironment
Keyword:
転移性脈絡膜腫瘍
,
ALK阻害薬
,
微小環境
,
metastatic choroidal tumor
,
ALK inhibitors
,
microenvironment
pp.1005-1011
発行日 2020年10月5日
Published Date 2020/10/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001831
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
脈絡膜転移を生じた原発性肺癌患者において,原発巣と転移巣で抗がん剤に対する異なる反応性が認められた1例を報告する。
50歳男性。2年前に肺腺癌(EML4-ALK陽性,stage Ⅳ)と診断され,分子標的薬(ALK阻害薬)による治療を受けていたが,左眼変視症が出現し,精査加療目的で当院へ紹介となった。視力は良好であったが,眼底写真において黄斑近傍に乳白色病変を認めた。網膜光干渉断層計像(OCT)において脈絡膜から隆起する病変で脈絡毛細血管板を圧排する所見が認められた。フルオレセインおよびインドシアニングリーン蛍光眼底造影検査では濃染されず,癌既往・臨床所見より最終的に転移性脈絡膜腫瘍と診断した。抗がん剤をALK阻害薬からpemetrexed+CDDPに変更したところ著効し,病変部は数か月で瘢痕を残してほぼ完全に消退した。眼科初診時から2年を経過した現在も,視力は良好に保たれ転移巣に変化はないが原発巣に増悪を認め,別種類のALK阻害薬への切り替えにより,原発巣・転移巣ともにコントロールが得られている。
原発巣と転移巣において抗がん剤に対する異なる反応性を呈した転移性脈絡膜腫瘍の1例を報告した。反応性の違いは,腫瘍を取り巻く微小環境の差異により生じた可能性が考えられた。
Copyright © 2020, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.