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感染性角膜炎において治療的角膜移植を行う際,病巣範囲,原因菌を考慮し症例ごとに術式を検討する必要がある。今回,薬物治療で鎮静化が得られず病巣が拡大した角膜周辺部に及ぶ真菌性角膜炎に対して,PKP+周辺部部分的表層角膜移植(peripheral partial LKP)を施行し,原因菌により異なる転帰をたどった2症例を経験したので報告する。
症例1は81歳の女性。右眼の移植片のやや鼻側からレシピエント角膜にかけてgraft-recipient間にまたがって角膜膿瘍を認め,原因菌はCandida属であった。薬物治療を行うも病巣は拡大したためPKP+peripheral partial LKPを施行した。最終的に移植片不全には至ったが,上皮欠損は認めず,隅角閉塞の程度も術前と比して拡大しておらず,感染の再燃も認めていない。症例2は74歳の男性。左眼の角膜中央部から周辺部に及ぶ膿瘍,角膜潰瘍を認め,原因菌はFusarium属であった。薬物治療を行うも病巣は拡大し前房内への穿通も疑われたことから,PKP+peripheral partial LKPを施行したが,その後周辺部から感染が再燃し,PKP+周辺部部分的強角膜移植(peripheral partial SKP)を行った。移植片不全には至ったものの角膜上皮欠損は認めず,感染の鎮静化も眼球形状も維持できている。
薬物治療で鎮静化が得られず病巣が拡大した角膜周辺部に及ぶ真菌性角膜炎において,原因菌がCandida属ではPKP+peripheral partial LKPを施行することで感染の鎮静化が期待できる症例がある一方,糸状菌,特にFusarium属では角膜全層切除を要するためPKP+peripheral partial SKPの選択が望ましい可能性が示唆された。
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