臨床報告
奇異性斜頸を呈したmasked bilateral superior oblique palsyの1例
満川 忠宏
1
,
鈴木 由美
1
,
吉川 泉
1
,
富田 茜
1
,
浜 由起子
1,2
,
富田 香
1,3
,
山田 昌和
1
1杏林大学医学部眼科学教室
2日本橋はま眼科クリニック(東京都中央区)
3平和眼科(東京都豊島区)
キーワード:
奇異性斜頸
,
不顕性両眼性上斜筋麻痺
,
融像幅
,
paradoxical head tilt
,
masked bilateral superior oblique palsy
,
amplitude of fusion
Keyword:
奇異性斜頸
,
不顕性両眼性上斜筋麻痺
,
融像幅
,
paradoxical head tilt
,
masked bilateral superior oblique palsy
,
amplitude of fusion
pp.427-433
発行日 2019年4月5日
Published Date 2019/4/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001135
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要 約
奇異性斜頸を呈したmasked bilateral superior oblique palsyの1例を経験し,その診断について若干の考察を加え報告する。
症例は,1歳1か月男児,左側への頭部傾斜を主訴に当科受診。眼位は,矯正頭位下において,第1眼位で左眼0.5mm上斜視,第2眼位で右方視により左上斜視が増強し,右側傾斜で右眼上転せず,左側傾斜で左眼の上転を認めた。眼球運動は左眼下斜筋過動および上斜筋の遅動を確認し,眼底は左眼のみ外方回旋していた。これらの所見より奇異性斜頸を呈した左眼片側性または両眼性上斜筋麻痺を疑い,6歳0か月時に左眼下斜筋減弱術を施行した。しかし術後6か月より,左への頭部傾斜が増悪し,右眼上斜視が顕性化,眼位は,角膜反射1mm右上斜視,遠見・近見ともに14プリズムジオプター(Δ)外斜視および25Δ右上斜視を認めた。7歳9か月時に,右眼下斜筋前方移動術を施行した。追加術後6か月の時点で頭位異常は認めず,眼位は正位,近見立体視(TNO)は240secを確認している。
本症例の患側への頭部傾斜は,masked bilateral superior oblique palsyの存在があり,初回手術前の不顕性側(右眼)の上斜視が顕性側(左眼)上斜視に比し上斜視の程度が大きく,上斜視の程度が小さい顕性側(左側)に傾斜することで,間欠的に両眼視していた可能性が考えられた。
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