私の経験例
老人にみられたmasked hyperthyroidism
西崎 統
1
1聖路加国際病院内科
pp.1948
発行日 1977年12月5日
Published Date 1977/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207560
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著患を知らない68歳の主婦が約1カ月前くらいから,夕方になると37.2〜37.5℃の微熱が出現するようになった.たいしたことはないだろうとのことで放置していた.ところが来院の2週間前頃から食欲がなくなり,また,胃部不快感も伴うようになってきた。同時に,その頃から明け方になると息切れのような息苦しさが出現し,目が覚めることがしばしばあった.しかも,その症状は約30〜40分続くとのことで来院した.
理学所見では血圧102/60,脈拍80/分,整.明らかな貧血はなく,表在リンパ節触知せず,甲状腺腫認めず,また胸部,腹部および神経反射にも異常を認めなかった.一般検査所見にても,血球計算,血沈,検尿,肝機能および胸部X線にも異常は認めなかった.来院時はどこかに感染症でもあるのではないかと考えていたが,ルチーンの検査ではそのような所見はまったくみられず,また,心電図をチェックしてみたが,これにも異常はなかった.そこで,年齢,現症歴から悪性腫瘍も十分考えられたので,胃X線や静脈性腎盂撮影などの検査を行ったが,いずれもこれといった異常は認めなかった.その間,次第に訴えが神経症的にもなってきたので,トランキライザーおよび消化剤を投与して様子をみた.
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