特集 FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)の最新知見
FAIの概念とわが国における診断指針
神野 哲也
1
1東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科リハビリテーション医学分野
キーワード:
骨形成
,
変形性股関節症
,
診療ガイドライン
,
大腿寛骨臼インピンジメント
Keyword:
Osteogenesis
,
Osteoarthritis, Hip
,
Practice Guidelines as Topic
,
Femoracetabular Impingement
pp.117-123
発行日 2017年2月19日
Published Date 2017/2/19
DOI https://doi.org/10.18885/J00282.2017116347
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股関節の機能:安定性と可動性
股関節や肩関節などの球関節では,関節の可動 性と安定性という相反する2つの機能をいかに発揮するかが問題となる。肩関節は皿状の臼を特徴とし,可動範囲が広いが,安定性は軟部組織によるところが大きい。一方,股関節は骨頭が臼に深く包まれている構造から臼状関節とよばれ,拘束性の高い骨形態による高い安定性を特徴とする。肩関節ほどの可動範囲は得られないが,寛骨臼の適度の前方開きや,大腿骨頭に比べ頚部の径が小さいといった骨形態から,必要な安定性と可動性を両立した構造となっている。寛骨臼による骨頭の被覆が不十分な場合,すなわち拘束性が不十分な場合は,関節の不安定性が惹起され,関節唇断裂や変形性股関節症の原因となる。この代表的な病態が寛骨臼形成不全であり,わが国の変形性股関節症の大半は近年においても寛骨臼形成不全によるものとされている1)。これに対し,近年注目されるようになった大腿骨寛骨臼インピンジメント(femoroacetabular impingement;FAI)は,これまであまり意識されてこなかった,拘束性の高さに由来する問題ととらえられる。
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