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【要 旨】
目 的:成人脊柱変形(adult spinal deformity:ASD)は,さまざまな程度の腰痛,下肢痛を伴う.本研究の目的は,ASD患者が術前にもつ疼痛のプロファイルが術後に示す多様な反応を解析し,患者満足度との関係を検討することである.
対象および方法:8施設でASDに対する初回の胸腰椎固定術を受けた患者を対象とした.術前の腰痛および下肢痛のnumerical rating score(NRS)を用いて二段階クラスター解析を実施した.またX線パラメータおよび患者立脚型評価尺度(patient-reported outcome:PRO)スコアを測定し,術後1年時の転帰および満足度をクラスター間で比較し,影響を与えた因子を分析した.
結 果:クラスター解析により191例のASD患者を,NP群(軽度の痛みのみ,n=55),BP群(腰痛のみ,n=68),BLP群(重度の腰痛および下肢痛,n=68)の3群に分類した.BLP群(平均腰痛NRS 7.6,下肢痛NRS 6.9)は,平均年齢73.4歳ともっとも高齢であり(p<0.001),椎体間固定(88%,p<0.001)および仙骨/骨盤固定(69%,p=0.001)が他群よりも多く実施されていた.また本群はpelvic incidence(PI)-lumbar lordosis(LL)のmismatchがもっとも大きく(平均43.7°,p=0.03),sagittal vertical axis(SVA)が最大(平均123mm,p=0.002)であった.術後,腰痛NRSおよびPROはすべての群で改善したが,BLP群の満足度はもっとも低く(80% vs. 78% vs. 63%,p=0.11),術後の腰痛NRSと負の相関を示した(ρ=-0.357,p=0.01).
結 論:クラスター解析の結果,ASD患者は異なる疼痛のプロファイルをもつ3群に分類された.重度の腰痛および下肢痛をもつ群は,もっとも進行した病態を示し,術後の満足度ももっとも低かった.この満足度の低下には,術後の腰痛の遺残が大きく影響している可能性が示唆された.

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