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は じ め に
脊椎の手術の道具や技術が進歩する以前は,「“腰曲がり” は歳だから仕方がない」などの一言で済まされる傾向にあった高度な成人脊柱変形(ASD)が,さまざまな条件が整い,適切な手術を施行すれば矯正可能になってきている.ASDに対する矯正手術における近年での進歩に大きな役割をはたしているのは腰椎側方進入椎体間固定術(LLIF)[腰椎前側方進入椎体間固定術(OLIF)と腰椎側方進入椎体間固定術(XLIF)]である.ASDに対する矯正手術へのLLIFの導入に伴い,さまざまな側面での進歩が認められているが,以下のような新たな課題も出てきた.① 安全性/合併症予防の観点からの課題(尿管損傷対策など),② 矯正方法の変化/椎体間ケージの挿入経路と形状の変化などに伴う課題(後方からの矯正操作時の前縦靱帯断裂など),③ 低侵襲化に伴う課題(患者選択上の課題と医療提供側の課題)といったことがあげられる.
ASDに対する矯正手術における最近の進歩に関しては,LLIFの導入が一つの契機となっているが,もちろんLLIFの導入以前から進歩していた部分も数多く存在する.LLIFの導入に伴い,ASDに対する矯正の原則が疎かにされていた傾向も一部に認められ,矯正手術の基本を再認識することはきわめて重要である.
本稿では,ASDに対する矯正手術における進歩と課題に関して,概説することを目的とする.特に課題の部分における個々の論点に関しては,現在,on-goingで研究をすすめている段階であるものが多く,今後,英語論文などで発表していく予定である.そのため個々の論点について,本稿では具体的なデータを示しながら述べているかたちになっていない点に関しては,ご容赦いただければ幸いである.また,本稿は主に若手医師向けの総説であり,ベテランの先生方にとっては基本的な内容が多くなっている点に関してもご容赦いただければ幸いである.
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