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は じ め に
厚生労働省によると1),2025年にいわゆる「団塊の世代」が後期高齢者へと移行し,75歳以上の後期高齢者が全人口の約18.1%を,65歳以上の高齢者が全人口の30.3%を占める.未曽有の超高齢社会は運動器診療の主たる対象を必然的に高齢者とし,はたして整形外科病棟は高齢者で溢れ返るようになった.そのため運動器疾患の治療のために整形外科病棟へ入院したものの,入院中に内科的疾患が悪化し,むしろそちらが主病名となる光景は日常茶飯事となっている.
その解決策としてホスピタリストシステム(hospitalist system:HS)という,病棟専従医を中心とした新しい医療形態が近年注目を浴びている2~5).HSのうち整形外科に特化したものが,hospitalist/orthopedic surgery co-management(HOCM)である.つまりHOCMは,ホスピタリストと呼ばれる病棟担当医が全身管理を担い,整形外科医は運動器疾患の手術的治療に集中するシステムである.ホスピタリストが急性期整形外科で生じる内科合併症に対応すれば,整形外科医の負担は軽減し,運動器疾患に思う存分集中することができる.
入院中に生じる最大の内科的合併症は死亡である.従来のシステムにおいては,在院死亡が発生した際に,主治医である整形外科医は有形無形の多大な労力を払う.HOCMはこの負担を減少させていると推測されるものの,本邦においてHOCMの在院死亡率に対する影響を検討した報告はない.本稿の目的は,地方中核病院2施設における在院死亡を比較し,タスク・シフト/シェアとしてのHOCMの意義について考察を加えることである.
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