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は じ め に
超高齢社会の到来により,運動器疾患の主な罹患者は必然的に高齢者となった.そのため整形外科病棟は高齢者で溢れ返り,整形外科医は不慣れな内科的管理に悪戦苦闘している.その解決策として,hospitalist/orthopedic surgery co-management(HOCM)が近年注目を浴びている1).HOCMとは,ホスピタリストと呼ばれる病棟担当医が全身管理を担い,整形外科医は手術的治療やリハビリテーションに集中するシステムである.ホスピタリストが急性期整形外科で生じる内科合併症に対応すれば,整形外科医はその本分である運動器疾患に思う存分集中することができる.
当院では,HOCMはなんの違和感もなく日常的に行われている.つまり,重症虚血肢,壊死性軟部組織感染症,化膿性脊椎炎,化膿性関節炎,大腿骨近位部骨折や脊椎椎体骨折をはじめとする脆弱性骨折,転移性骨腫瘍などの整形外科疾患に関して,総合診療科が主科となって全身管理に当たり,整形外科は手術やリハビリテーションのみを担当する.
入院中に生じるもっとも重篤な合併症は死亡である.在院死亡が生じれば,主治医は有形無形の多大な労力を払わなければならない.筆者は,HOCMが整形外科の在院死亡率を有意に低下させることを報告した1).働き方改革の観点からみれば,HOCMは整形外科医から内科医へのタスク・シフト/シェアにほかならない1~3).
しかしながらHOCMは本邦ではまれな取り組みであり,一握りの施設でしか行われていない4~7).当院でHOCMが普及した歴史を知ることは,他院でHOCMを開始する際のヒントとなる.当科は初期研修担当科を前身として1999年に設立された.当科には生き字引のような古参の医師が何名か在籍している.彼らの述懐によると,HOCMは設立当初から実現していたわけではなく,いつのころからか徐々に行われるようになったとのことであった.そして4名で設立された当科は,今や40名を超える大所帯となっている.規模が大きくなれば,やれることも増える.
総合診療科の人的資源が充実すればHOCMが実現し,その結果として整形外科の在院死亡率が低下するのではないかと筆者は考えた.本検討の目的はこの仮説を検証すること,つまり総合診療科のマンパワーと整形外科の在院死亡率との間に関係性があるか否かを調査することである.
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