Japanese
English
論説
橈骨遠位端骨折徒手整復後の再転位を及ぼす因子
Evaluation of factors affecting re-displacement after manual reduction for distal radius fracture
久保田 聡
1
,
久保田 亘
1
S. Kubota
1
,
W. Kubota
1
1久保田整形外科医院
1Kubota Orthopaedic Clinic, Hiratsuka
キーワード:
distal radius fracture
,
manual reduction
,
re-displacement
Keyword:
distal radius fracture
,
manual reduction
,
re-displacement
pp.301-306
発行日 2022年4月1日
Published Date 2022/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei73_301
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は じ め に
橈骨遠位端骨折は日常診療でよく遭遇する外傷であり,わが国では1万人あたり10.9~14例の発生率で,女性は男性の約3倍多く発生する疾患である1).橈骨遠位端骨折の70~90%は保存的治療が行われ,手術的治療が治療法全体に占める割合は20~30%になっており2),骨折の転位にもよるが,保存的治療が行われることが多い.
受傷時に転位を伴った骨折は,非観血的に徒手整復を行い,骨折の残存変形の程度により治療方針を検討する.徒手整復後の残存変形が大きい場合や,徒手整復後の保存的治療中に骨折の再転位により残存変形の増悪が生じた場合には手術的治療が選択されることが多い.『橈骨遠位端骨折診療ガイドライン』では,徒手整復後の残存変形は,関節外骨折ではpalmar tilt(PT)が−10°未満かつulnar plus variance(UV)が健側と比較して2mm以下での差異であれば許容されると示されており,残存変形が大きければ治療成績がわるくなるとされている3).しかし,徒手整復後の状態で保存的治療を行うことで再転位が生じる要因について,すなわちどのような徒手整復後の残存変形がその後の骨折の再転位をきたしやすいのかについての明確な指針はみられない.橈骨遠位端骨折の再転位を及ぼす要因を把握することは,保存的治療の適応を判断するうえで重要である.
われわれは徒手整復を行い,保存的治療を施行した橈骨遠位端骨折の再転位を及ぼす因子について検討した.
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