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は じ め に
男女や年齢を問わず性ホルモンの欠乏は破骨細胞を活性化するのと同時に,酸化ストレスの増大による骨基質コラーゲンの劣化を招き,骨の強度を低下させる.女性は閉経とともに,そして男性も壮年期以降,性ホルモンは減少し回復することはない.骨粗鬆症の病態の根底は性ホルモンの減少であることから,たとえなんらかの介入(運動,食事,薬剤)を行ったとしても,介入を中止したとたんに,破骨細胞は息を吹き返し,骨量,骨質の低下がはじまる(図1).
ビスホスホネート(BP)はカルシウムに結合するため,そのカルシウム結合強度および期間依存性により休薬することは可能である.しかし,BPであっても,骨から薬剤が代謝されてなくなれば,性ホルモン減少のあおりを受け,骨量,骨質は低下に転じる.世界的に「いつまで続ける骨粗鬆症治療」という論議が行われている.これは,「休薬できるか骨粗鬆症治療」ということであって,生涯,病態の根幹が改善しないため,定期的な検査のうえで,生涯,なんらかの介入が必要ということになる.事実,骨に沈着しないBP以外の薬剤は,治療中止とともに1~2年で骨密度は治療前値にまで低下し,骨折リスクが上昇してくることが知られている.こうした事実をふまえ,すでにいくつかの骨粗鬆症治療薬では,「同薬剤を中止した際には適切な薬剤で治療を継続すること」と,法的拘束力のある添付文書に記載されている(図1).
人生100歳時代といわれているが,壮年期以降の長きにわたり治療を継続するためには,効果と副作用を鑑みて適切な薬剤による逐次療法が必要となる.
そこで,本稿では,骨粗鬆症の病態と,薬剤選択の際に参考となるロジックとエビデンスを紹介する.特に骨粗鬆症の病態や市販されている骨粗鬆症治療薬の骨量や骨質に対する影響は,ヒト骨とおなじく骨リモデリングを営むサルや家兎,イヌといった大型動物に対する非臨床試験をもとに,『生活習慣病骨折リスク診療ガイド2019年度版』1)にも掲載しているので参考にしていただきたい.
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