Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
は じ め に
変形性膝関節症(膝OA)に対する下肢筋力トレーニング(筋トレ)は,Osteoarthritis Research Society Internationalのガイドラインでは推奨度96であり,有効性の高い治療法である1).しかし,筋の柔軟性が低下すると筋が効率よく収縮することができず,筋活動の調節力が低下するため,柔軟性を高める筋ストレッチング(ストレッチ)を行う必要がある2).
澤野ら3)は,膝OA患者の下肢筋に対してストレッチだけを行う群と筋トレだけを行う群に分け,4週間後の治療成績を比較した.その結果,大腿四頭筋力を体重で割った値である体重支持指数は,ストレッチ群では有意に改善したが,筋トレ群では有意な改善はなかった.その理由について,ストレッチによる筋バランスの改善のほうが筋トレよりも結果的には筋出力の向上をもたらすため体重支持指数が改善した可能性があると述べた.
膝OAに対するストレッチは,主に膝関節伸筋群と屈筋群に対して行われる.Aokiら4)は,膝関節伸筋である大腿四頭筋に対するストレッチ運動を行った膝OA患者は,その運動を行わなかった膝OA患者に比べて,80日後の仰臥位での膝のROM,痛み,歩行速度および歩行中の膝のROMが有意に改善していたと報告している.塚原ら5)は,膝関節屈筋群である腓腹筋内側頭のストレッチを膝OA患者に指導したところ,それを指導しなかった患者に比べて疼痛,歩行機能,関節可動域,アライメントが有意に改善したと報告した.しかし,これらの研究は,本邦で膝OAの保存療法として普及している注射療法と併用したストレッチ運動の効果を評価した研究ではなかった.
今回の研究では,鵞足へのステロイド注射とヒアルロン酸(HA)関節内注射を受ける膝OA患者に屈曲ROM改善を目的とした大腿四頭筋と伸展ROM改善を目的とした腓腹筋内側頭の2つのストレッチを指導し,個々の患者における伸展ROMの改善と屈曲ROMの改善が臨床症状の改善に及ぼす影響を検討した.
© Nankodo Co., Ltd., 2018