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は じ め に
変形性膝関節症(膝OA)患者の多くは,保温する目的で円筒状の布製のはくかたちの軟性装具層(サポーター)を自主的に装着している.しかしサポーターの保温効果が膝OAの疼痛を緩和するとの見解を疑問視する研究がある.Mazzucaら1)は,膝OA患者に体温を保持するような機能を備えた円筒状のサポーターを装着した患者群と通常の綿の弾性包帯を装着した患者群に分け,4週間治療前後での重症度指数の改善度を比較した結果,重症度指数の改善度には両群間で有意差はなかったと述べている.この結果からサポーターの効果は保温が主たる要因ではないと考察した.
膝OAに対する膝蓋部の皮膚が露出したサポーターの作用機序は固有知覚の改善であるとの報告がある.Herringtonら2)は,膝蓋部の皮膚が露出したサポーター装着前後で三つの異なった種類の固有知覚の試験(軌跡試験,再現試験,角度認知試験)を行った.その結果,膝蓋部皮膚露出型サポーターを装着すると,すべての固有知覚試験が鋭敏になった.
膝蓋部皮膚露出型サポーターによる固有知覚の改善作用を強化するために,固有知覚膝ブレース(proprioceptive knee brace)が開発された.その一つがOA Reaction(DJO社,Vista)であり,皮膚露出部の形状的特徴からwebbing(クモの巣状)ブレースと表現される3).
Kwaeesら3)の実験では,膝OA患者がOA Reactionを装着すると階段を下りるときの最大回内,運動の横断可動域(ROM),横断面角速度および最大回内角速度の減少が観察された.しかし,OA Reactionを含む固有知覚ブレースは高価かつスポーツ選手向きのデザインであり(図1a),筆者は数人の高齢膝OA患者にすすめたが,購入にいたらなかった.
本研究では,市販されている円筒状生地のサポーターの前面にクモの巣状に穴を開け,皮膚を露出させた場合にも固有知覚が改善し,臨床症状が改善するか否かを検討した.
© Nankodo Co., Ltd., 2020