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は じ め に
多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)は,血小板中に含まれる多種の成長因子を放出し損傷組織の治癒を促進すると考えられており,欧米を中心にアスリートのオーバーユース腱障害に対して広く使われている1).
基礎研究では,PRPは関節軟骨に対してTGF-βシグナル伝達機構によって軟骨欠損部を線維性軟骨に置き換えることや細胞外基質を産生し生物学的な足場を作製することが報告されている2,3).
このようなメカニズムに基づいて,PRPの変形性膝関節症(膝OA)への臨床応用が進んでいる.Raeissadatら4)は,PRP関節内注射がヒアルロン酸関節内注射よりも症状を軽快させ生活の質(quality of life:QOL)を向上させたことから,一般的な治療法に反応しなかった膝OA患者には試してみる価値のある保存的治療法であると述べている.しかし,どのような膝OA患者に対してPRP関節内注射が効果的であるかについては,統一した見解にいたっていない.
筆者は,PRPがアスリートやオーバーユース障害に効果があることから膝OA患者の中でも運動習慣のある者に対して特に効果があるという仮説を立て4週間の前向き調査を行った5).その結果,週2回以上運動しており,持続時間が30分以上で,継続期間が1年以上の運動習慣あり群の改善率は,運動習慣なし群に比べて有意に優れていた(p=0.022).このため,運動による負荷は膝OAに対するPRPの効果を高めると報告した.
しかし,運動習慣の有無は定性的な因子であり,運動量には個人差がある.そこで本研究では,定量的な因子である年齢,罹患年数,性,body mass index(BMI),Kellgren-Lawrence(K-L)分類6),超音波診断装置(US)で計測された半月板逸脱長とPRPの効果を比較した.
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