連載 Focus On
疾患特異的iPS細胞を用いた研究の最前線
伊藤 正道
1
1東京大学医学部附属病院循環器内科/疾患iPS研究グループ
キーワード:
CRISPR/Cas9
,
オルガノイド
,
precision medicine
Keyword:
CRISPR/Cas9
,
オルガノイド
,
precision medicine
pp.297-303
発行日 2021年2月1日
Published Date 2021/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika127_297
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ある疾患を有する患者から樹立した「疾患特異的iPS細胞」には,疾患に関与する遺伝子変異を含むゲノム情報が再現されており,それらを罹患臓器の構成細胞に分化させた細胞は疾患のモデル細胞として利用できる可能性がある.とくにヒト細胞モデルが存在していなかった疾患領域においては,疾患特異的iPS細胞は非常に有用な研究リソースであり,病態解明のみならず治療薬開発に役立つことが期待されている.近年,本邦からも疾患特異的iPS細胞の解析結果に基づいて新しい治療候補化合物が同定され,治験の開始にいたった成功例が相次いで報告されている.細胞表現型のばらつきや分化細胞の未熟性,コストなどの課題は残っているものの,ゲノム編集やオルガノイド研究などの細胞生物学の技術進歩に支えられ,iPS細胞を用いた疾患研究はますます発展していくと思われる.
© Nankodo Co., Ltd., 2021