特集 内科医に求められる他科の知識―専門家が伝えるDo/Don’t
第5章 産婦人科
婦人科の急性腹症
深澤 宏子
1
,
平田 修司
1
1山梨大学医学部産婦人科
pp.1900-1902
発行日 2019年9月1日
Published Date 2019/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika124_1900
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女性の急性腹症とは
急性腹症は日常診療でしばしば遭遇するが,その原因は消化器疾患,循環器疾患,泌尿器科疾患など多岐にわたる.女性の場合,それに加えて婦人科ならびに産科疾患も原因となりうるため,産婦人科以外の医師は,女性の急性腹症の診療に近寄りがたさを感じていることが少なくない.妊娠が可能な年齢の女性患者の診察に際しては,プライバシーに留意しつつ妊娠や月経に関する問診が重要である.とはいえ,最終月経を聞いても女性の性周期に関して詳しくないのであまり参考にならないという声が聞こえてきそうなので,月経周期により生じる可能性のある腹痛を図に示す(図1).通常,妊娠が成立しなければ排卵後約2週間で月経となるため,月経周期の長短は卵胞期の長短で決まると考えてよい.月経周期が28日の女性では月経開始から排卵までが約14日,35日周期の女性ならそれが約21日ということになる.腹痛の生じた時期が月経周期のどの時期であるかを知ることは腹痛の原因を探るうえで参考になる.たとえば,“黄体期で性交渉後の突然発症であれば,黄体出血が強く疑われる” のである.さらに婦人科受診歴や婦人科疾患の既往の聴取も必要となる.患者が婦人科を受診したことがあってすでに婦人科疾患(卵巣腫瘍など)を指摘されていれば,検査を進めやすいし,逆に卵巣に異常を認めていない場合には茎捻転の可能性は低いということになる.
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