連載 未来の専門医を育てる!
名古屋大学の呼吸器外科教育―理想と現実のはざまで考えること
芳川 豊史
1
TF. Chen-Yoshikawa
1
1名古屋大学呼吸器外科
pp.313-315
発行日 2023年4月1日
Published Date 2023/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kyobu76_313
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呼吸器外科は,本邦では心臓と食道以外の胸部の臓器や構造物を扱う診療科である.つまり,肺,縦隔,胸膜,気管に対する外科手技を主に行う.呼吸器外科領域における手術数は経年的に増加しており,その半数以上が肺癌に対する手術である.呼吸器外科医は,一般的に肺癌に対する外科手技の腕を磨くことになるが,免疫チェックポイント阻害薬の開発など昨今の肺癌に対する内科治療の進歩にも対応する必要がある.近年,通常の抗癌薬だけでなく,分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬を用いた術前および術後の治療に期待が寄せられ,手術療法を含む集学的治療を理解する外科医の養成も必須となっている.また,縦隔腫瘍や胸膜中皮腫など,専門的知識と経験が必要な比較的まれな疾患も取り扱わないといけない.さらには,近年増加している慢性呼吸不全に対する治療である肺移植など,外科手技だけでなく幅広い内科的知識や集中治療管理が必要な分野もカバーする必要が生じている.
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