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AYA世代の家族の問題点と課題
本稿では,AYA世代の患者と家族を取り上げるが,AYAとは英語の“adolescent and young adult”の頭文字で,年齢的には15~39歳と幅広く,15~19歳をA(思春期)世代,20代以降をYA(青年期~大人)世代として分けることがある.この年代の区分を家族との続柄と形態から考えると,生まれ育った家族とともにいる思春期と,家から出て自立する「離家」の青年期,そして新たな家庭をもつ若い大人,ということができる.この生まれ育った家族を「原家族・定位家族(以下,原家族)」とよび,婚姻でつくる家族を「生殖家族」とよぶ.一般に「がん患者と家族」と大枠で語られることが多いが,原家族と生殖家族の家族メンバーは,それぞれの立場と異なる文脈をもって,医療者の前に現れる.
一般に,AYA世代のがんは,希少がんも含まれていて,治療法が確立されておらず,予後が厳しいといわれている1).したがって,この年代での進行がんの発病は,本人はもちろんのこと,家族に大きな衝撃をもたらす.あまりの大きな衝撃・危機状況ゆえに,本人・家族はともに大きくゆらぎ,解決を求めてもがく.この場において医療者は,家族が凝集性を高めて家族内コミュニケーションをとり,本人の支援者としてサポートしてくれることを期待する.
しかし,病状の進行は,家族の中に「語り合えなくなる現実」をまざまざと露呈させてくる.愛情がないわけではなく,患者を思いやるばかりに,家族は治療の意思決定場面などで必死の対応となり,それがかえって本人と家族の関係性をギクシャクさせてしまう.
本稿では,思春期・青年期患者の「原家族」と,若い大人世代患者の「生殖家族」を取り上げて,その家族内葛藤と解決に向けての方策を考えてみたい.なお,取り上げる事例はフィクションである.
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