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認知症高齢者を抱える家族の問題点と課題
2023年,日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は29.1%を示し1),今後の見通しでは,令和19年には高齢化率は33.3%と,3人に1人は65歳以上と推計されている2).また,この中で,認知症患者数は,平成24年では462万人だったが,令和7年には700万人と65歳以上の5人に1人になると推計されている3).
こうした中で,65歳以上の死因の第一位はがん(悪性新生物)であることから,高齢者,とくに認知症高齢者ががん治療を受ける機会は,今後増加していくことが予想され,がん治療におけるさまざまな問題が大きくなることが推察される.
とりわけ認知症高齢者の場合は,本人だけでなく,家族もさまざまな課題を抱えることになる.がん治療のプロセスにはさまざまな意思決定の場面があるが,とくに,治療を継続するためのアドヒアランスが十分でないなど,認知症高齢者にとっては困難なものとなる.
また,家族は本人の意向と自分たちの思いの中で揺れ動き,ジレンマが生じ,「あいまいな喪失」4)により心理的に不安定になる.また,治療などに関する意思決定の場面では,本人の意思が明確でないために,家族の意向に一任される(代理意思決定)ことがあるが,医療者はだされる結論が本人の意思なのか,家族の思いなのか迷うことがある.このように,代理意思決定の場面では,本人,家族だけでなく,医療者も巻き込み,倫理的葛藤が生じることがある.
本稿では,認知症高齢者を抱える家族のさまざまな葛藤も含めた代理意思決定場面における看護師の支援方法を,家族アセスメントモデル(「渡辺式家族アセスメント・支援モデル」5))を用いて解説する.
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