連載 My Favorite Medicine!! 私が注目している抗がん薬を紹介します 【21】
シスプラチン(ランダ®など)
菅野 かおり
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1公益社団法人日本看護協会神戸研修センター
pp.602-603
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango27_602
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どんな薬?
シスプラチンは世界で最初に開発・承認されたプラチナ製剤です.精巣腫瘍や卵巣がん,子宮がん,肺がん,尿路上皮がん,頭頸部がんなど多くのがん種で有効性を示しており,標準的治療のなかにKey drugとして組み込まれています.シスプラチンの開発は,1965年に米国ミシガン州立大学の細菌学者Barnett Rosenbergらが細菌に対して電場が及ぼす影響を調べていたときに,実験に用いたプラチナ電極によって大腸菌の増殖が抑制されていることに気づいたことから始まりました.そのデータを応用して1969年にはプラチナ化合物によるがん細胞の分裂抑制効果をみる研究が始まりました.その後,1970年代初期に米国国立癌研究所(NCI:National Cancer Institute)の指導で臨床試験が開始されましたが,強い腎毒性が問題となりいったん開発が中断されました.その後,シスプラチン投与時に大量の水分負荷と利尿薬を併用することで腎障害を予防あるいは軽減することがわかり,1978年に米国で承認,日本では1984年に承認されました.
その後もプラチナ化合物の研究は継続されており,シスプラチンの腎毒性をはじめとした副作用の軽減を目的に開発されたのが第2世代のカルボプラチン,ネダプラチンです.さらに,日本で開発された第3世代のオキサリプラチンが登場しました(表1).これらのプラチナ製剤によって,今でも多くのがん種がその恩恵を受けています.一方で,各薬剤の副作用プロファイルは異なっているため,投与管理をするうえでそれぞれの薬剤の特徴をよく理解しておく必要があります.
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