特集1 いまはこうする がん看護 ~サポーティブケア~
【症状緩和】
せん妄 ~早期発見,予防的ケアによって重症化を防ぐことができる~
前原 朝美
1
,
綿貫 成明
2
Asami MAEHARA
1
,
Shigeaki WATANUKI
2
1国立がん研究センター中央病院看護部/緩和ケア認定看護師
2国立看護大学校老年看護学
pp.16-20
発行日 2022年1月1日
Published Date 2022/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango27_16
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
せん妄は身体的要因によって急性に生じる注意力障害を主体とした精神神経症状の総称である1).がん治療のあらゆる時期に出現する可能性があり,せん妄有病率は急性期一般病院におけるがん患者で約16%,終末期進行がん患者で約30%とされ,終末期に近づくほどせん妄発症の頻度は高くなる2).
多様な症状を伴うせん妄により,患者は強い恐怖や不快感を体験する3).また転倒・転落,ルートやチューブ類の事故につながること,2次合併症を併発し入院の長期化を招くこと,長期的には認知機能低下と関連すること,さらには死亡率の上昇につながるといった生命予後にも影響することが報告されている4).せん妄を発症した患者の家族も,患者がせん妄になることで強い精神的苦痛を体験することが知られている3).とくに医療スタッフが少なくなる夜間における過活動型せん妄への対応は,医療スタッフ,とくに看護師に心身ともに強い疲弊感を与える.このようにせん妄は多岐にわたるデメリットをもたらす4).がん治療を支援する看護師はせん妄のリスクを事前に把握し,せん妄の予防に努め,早期発見により重症化を防ぐことが重要な役割となる.
© Nankodo Co., Ltd., 2022