連載 対話に学ぶコミュニケーション ~第二の患者である家族とのかかわりかた~ 【2】
夫の予後不良告知後に茫然となり混乱した妻
堀 孔美恵
1
1東邦大学医療センター大橋病院/がん看護専門看護師
pp.348-352
発行日 2021年5月1日
Published Date 2021/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_348
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事例紹介
妻(55歳)は夫(患者)と2人暮らし(子どもはいない).夫と同じ会社で経理を担当していた.夫とは公私ともによきパートナーであり,共通の趣味は旅行であった.今後は主婦として夫を支えようと退職したばかりであったが,その矢先に夫に非小細胞肺がん(腺がん)が見つかり,4日後にけいれん発作があり脳転移と診断された.2日後に開頭腫瘍摘出術,ガンマナイフが施行された.その後,遺伝子検査などの結果でEGFR(-)PD-L1(+)注1をふまえて,肺がん治療のため免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブ(キイトルーダ®)が開始された.2クール目が終了すると免疫関連有害事象で全身発疹,下肢浮腫が出現したうえ,肺がんが増大したため,放射線療法(60 Gy/30 Fr)+抗がん薬治療(CBDCA+PEM)に変更した.しかし3日目に遅発性悪心・嘔吐,食欲不振,倦怠感が出現,体重が減少していた.
がん相談支援センターのパンフレットを見た妻から面談の申し込みがあり,看護師が面談をすることになった.
注1EGFR:上皮成長因子受容体と呼ばれるタンパク質である.遺伝子検査で変異が陽性であれば分子標的治療薬を選択するが,患者は陰性である.
PD-L1:がん細胞の表面にあるタンパク質である.免疫チェックポイント受容体であるPD-1に結合すると免疫細胞が抑制される.PD-L1検査で免疫チェックポイント阻害薬の効果を判定する.
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