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2030年代には多死社会の到来を迎えるわが国では,「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(厚生労働省,2018年3月14日)が提示され,人々の死,死生観への関心が高まっている.医療においては,病院完結型医療から地域完結型医療への移行が進む中で,「QOD(クオリティ・オブ・デス)を高める医療」が入ると記述(社会保障制度改革国民会議報告書,2013)されており,QODを高める医療も期待される.看護においては,死に逝く人とその家族の看護は,終末期看護,ターミナルケア,緩和ケア,遺族ケアなど多様な言葉で表現されるが,どの用語を使用しても患者の人生の最終段階の時期を対象とすることは同じである.
本書においては,臨床になじみのある用語としてターミナルケアおよびグリーフケアを用いることとする.ターミナルケアとは,治癒不可能な段階にいたった疾患をもって人生の終末時期にいる人々が,豊かにその人らしく生き抜くことができるように,その人に寄り添い,擁護者となって実践する専門的な看護である.同時に,その人の最期をともに生きる家族に対して死別後の健康生活も見据えて実践される看護援助である.グリーフケアとは,愛する者との死別という喪失後の悲嘆(グリーフ)に対するセルフケアおよび複雑な悲嘆に対して専門家によって行われる援助である.
本連載では,人生を生き抜く人および家族にシームレスに寄り添う看護はいかにあるべきか,これからのターミナルケア・グリーフケアの考え方,病院や在宅でのターミナルケア・グリーフケアの実践について,包含されている倫理的課題の見える化および看護職者自身のグリーフなどの感情への共助のあり方も含めて解説し,さらに,地域でのグリーフを支える教育活動を紹介し,ターミナルケア・グリーフケア研究の動向と展望について,実践的な観点から概説する.
この連載を契機として,がん看護のターミナルケア・グリーフケアの看護実践の一助となれば幸いである.
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