連載 判例にみるジェンダー・3
妻に対する夫の暴力と夫からの離婚請求
石井 トク
1
1岩手県立大学看護学部
pp.272-273
発行日 2001年3月25日
Published Date 2001/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902613
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妻に対する夫の暴力
1993年12月の国連総会で「女性に対する暴力の廃絶宣言」が採択された。宣言の第1条では,女性に対する暴力を次のように定義している。「性別に基づく暴力行為であって,女性に対して身体的,性的,若しくは心理的な危害または苦痛となる行為,あるいはそうなるおそれのある行為であり,さらにそのような行為の威嚇,強制若しくはいわれのない自由の剥奪をも含み,それらが公的生活で起こるか私的生活で起こるか問わない」。さらに,国連総会の「女性2000年会議」では,夫・パートナーからの暴力(ドメスティックバイオレンス:DV)は「犯罪」であるとして,各国がその撲滅に向けて同意した。
わが国においても,夫の妻に対する暴力は肯定されてきた歴史があるとも言ってよく,男性の権威の象徴ですらあった。現在でも,暴力によって妻を教育するという暴言を吐く者もいる。
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