- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
どんな薬?
アルブミン懸濁型パクリタキセルは,人血清アルブミンとパクリタキセルを結合させてナノ粒子化したパクリタキセル製剤です.一般的にnab-パクリタキセルと呼ばれていて,過敏症などによりパクリタキセルを使用できない,あるいは前投薬で使用するステロイド薬をためらう患者などに使用できます.
パクリタキセルは,水にきわめて溶けにくいという性質があるため,溶媒としてポリオキシエチレンヒマシ油(クレモホール®EL)および無水エタノールが使用されています.これらの溶媒によって過敏症などの副反応が出現するため,前投薬や投与時間の調整などの対応を行っています.ポリオキシエチレンヒマシ油はアレルギー反応(瘙痒感,呼吸困難感,血圧低下など)を高頻度で起こすため,予防的にステロイド薬と抗ヒスタミン薬の前投薬を行います.また,無水エタノールは3週間に1回投与するレジメンの場合,ビール500 mLに相当するアルコールが含まれているため,治療後に車を運転すると飲酒運転と判断されます.さらに,アルコール過敏症の患者に使用した場合,「顔がほてる」「赤くなる」「かゆい」「頭が痛い」などの症状を訴えられます.こういった,過敏症やアルコール反応のためにパクリタキセルを使用できない患者への投与,あるいは点滴時間の短縮,前投薬なしで使用できるというのがnab-パクリタキセルです.
nab-パクリタキセルは米国のAbraxis BioScience社が開発した薬で,パクリタキセルを人血清アルブミン存在下で処理するとナノ粒子が得られることを見出した結果,ポリオキシエチレンヒマシ油や無水エタノールがない状態でもアルブミンで安定化されたパクリタキセル製剤をつくることができました.このことによってnab-パクリタキセル使用時は,前投薬不要,点滴時間の短縮,1回投与量を増やすことも可能になりました.しかし,投与量が従来のパクリタキセル製剤に比べ多く使用できることから末梢神経障害などの頻度が高くなることと,人血清アルブミンを使用していることから,特定生物由来製品に該当するため,投与時には医薬品名,製造番号または製造記号,使用年月日,患者の氏名,住所などを記録し,少なくとも20年間保存することが決められています.
© Nankodo Co., Ltd., 2021