- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
免疫チェックポイント阻害薬がほとんどの固形がんの治療体系を変えた。今まで有効な薬剤がなかった転移性悪性黒色腫では治療を終了しても10年以上再発がない症例もみられ,「治癒」という言葉も聞かれるようになった。乳癌への免疫チェックポイント阻害薬の導入は遅れたが,抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブが,アルブミン懸濁パクリタキセルとの併用でPD-L1陽性のトリプルネガティブ乳癌に対して承認された。この承認はIMpassion130試験の結果に基づいている。この試験は,転移・再発のトリプルネガティブ乳癌の一次治療において,アルブミン懸濁パクリタキセル併用下でアテゾリズマブの有用性をプラセボ対照ランダム化比較試験で検証した。併用により無増悪生存期間(PFS)は5.5ヵ月から7.2ヵ月,ハザード比(HR)0.80(95%CI:0.69-0.92,p=0.002)と延長した。PD-L1陽性例ではPFSを5.0ヵ月から7.5ヵ月に延長(HR0.62,p<0.001)させたが,PD-L1陰性例ではアテゾリズマブ群もプラセボ群も5.6ヵ月と全く差がみられていない1)。全生存期間は,その後の2度目の中間解析でも21.0ヵ月,18.7ヵ月と延長傾向(HR0.86,p=0.078)はみられたが,有意差には至っていない2)。他のがんのように長期生存を増やせるかどうかは今後の経過を観察する必要があるが,治療オプションが少なかったトリプルネガティブ乳癌治療において武器が増えたことは朗報である。●本企画「誌上ディベート」は,ディベートテーマに対してあえて一方の見地に立った場合の議論です。問題点をクローズアップすることを目的とし,必ずしも論者自身の確定した意見ではありません。また,特定の薬剤の誹謗をするものではありません。・論点整理/南博信・「すべきである」とする立場から/能澤一樹/岩田広治・「すべきでない」とする立場から/青山陽亮/田辺裕子
Medical Review Co., Ltd. All rights reserved.