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アテゾリズマブは「PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌患者」に対して,アルブミン懸濁パクリタキセル(nab-PTX)との併用において,2019年9月に承認された。これは,IMpassion130試験(転移・再発乳癌に対する全身性の前治療歴のない転移・再発または局所進行性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の乳癌患者を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験)の結果に基づくものであり,乳癌診療における標準治療としてはじめて免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が使用されることとなった。トリプルネガティブ乳癌は組織学的にエストロゲン受容体陰性,プロゲステロン受容体陰性,HER2陰性が確認された乳癌のサブタイプのひとつで,他のサブタイプと比較して予後が悪く,再発も多い傾向にある。トリプルネガティブ乳癌は初回再発までの期間も比較的短いことが知られており,ホルモン受容体陽性の集団で初回再発までの期間が中央値67ヵ月であったのに対し,トリプルネガティブ乳癌では25ヵ月であったとする報告がある(OR0.503,95%CI:0.371-0.682,p<0.0001,log-rank検定)1)。議題のようにトリプルネガティブ乳癌において,術後化学療法を終了して半年程度の再発は臨床的に経験することは十分に考えられ,重要なdiscussion pointであると考えられる。「術後パクリタキセル終了半年後に再発したトリプルネガティブ乳癌に対してアテゾリズマブ(+アルブミン懸濁パクリタキセル)を使用すべきか」に対し,「すべきでない」とする立場から根拠を提示する。「有効性に関連する主張」と「その他の主張」に分けて考え,軸となる根拠として「有効性に関連する主張」ではIMpassion130試験では無再発期間<12ヵ月の症例は含まれておらず有効性のエビデンスがない点を,「その他の主張」では免疫関連有害事象/QOLの低下という点を挙げる(図1)。●本企画「誌上ディベート」は,ディベートテーマに対してあえて一方の見地に立った場合の議論です。問題点をクローズアップすることを目的とし,必ずしも論者自身の確定した意見ではありません。また,特定の薬剤の誹謗をするものではありません。・論点整理/南博信・「すべきである」とする立場から/能澤一樹/岩田広治・「すべきでない」とする立場から/青山陽亮/田辺裕子
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