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PRO-CTCAEとは
近年,患者報告型アウトカム(Patient-Reported Outcome:PRO)による有効性評価が医薬品の承認申請でも認められるようになった.さらには有効性だけではなく,安全性評価に対するPROの活用も進んでいる.
2000年代に入り,医療従事者-患者間で有害事象の評価には乖離が生じていること,そしてその多くは医療者が過小評価している傾向にあることが,複数の研究によって示されてきた.具体的には,がん領域で汎用されている有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events:CTCAE)で行う有害事象評価がまさにそうである.患者が主観的に感じることができる有害事象について,これまでどおり医療者が評価するだけでなく,同様の基準で患者自身も評価したところ,多くの症状で不一致が認められたのである.これでは有害事象の全体像を描き切れていないことになる.このことが問題視され,開発に着手されたのが患者報告型アウトカム版CTCAEである,PRO-CTCAE (Patient-reported outcome version of Common Terminology Criteria for Adverse Events)である.PRO-CTCAEは,米国National Cancer Institute,メモリアルスローンケタリングがんセンターが中心となり,Dr. Ethan Baschらによって開発が進められた.
CTCAEは,そもそもがん領域に従事する医療者であれば,知らない者はいないであろう有害事象の評価様式・システムである.なお有害事象とは,「医薬品が投与された際に起こる,あらゆる好ましくないあるいは意図しない徴候,症状または病気のことであり,当該医薬品との因果関係は問わない」とされていて,有害事象と医薬品との因果関係を加味したのが副作用である.現時点(2020年初頭)はVersion 5.0がリリースされ普及しているが,2009年にリリースされたVersion 4.0から医学的に検証された国際的医学用語集であるMedical Dictionary for Regulatory Activities:MedDRAにも対応しており,全世界で用いられているがん領域の有害事象評価のゴールド・スタンダードとなっている.しかし,CTCAEは文献レビューや患者のパースペクティブではなく,エキスパート・オピニオンにより作成されたツールであることから,「de fact standard(事実上の標準)」とも言われている.
CTCAEは,①症状,②臨床検査値,③バイタルサインなど技術的に測定可能なもの,の3つの領域で構成されている.そして,これらがすべて,「患者による報告」ではなく「医療者による報告」なのである.このうち,先述した医療者と患者の間における有害事象評価の乖離は,患者が主観的に感じることができる症状に関連する有害事象である.そこで開発者らはCTCAE version 4の790項目のうち,患者の主観評価が可能な78症状を選択し,患者が理解しやすい表現への置き換えなどを行った.日本語版の開発は山口ら1,2)を中心に行われ,研究での使用が始まっている(原版は版権の都合で掲載できない).
日本語版へのリンク
https://healthcaredelivery.cancer.gov/pro-ctcae/pro-ctcae_japanese.pdf
© Nankodo Co., Ltd., 2020