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はじめに がん研有明病院は,「癌研究会附属病院」として,1934年に日本で最初に誕生した癌専門病院である.当院の腫瘍外科の理念は,創始者である梶谷環先生により確立された.その特徴は,解剖学的な層構造を重視した手術操作であり,助手と術者によるカウンタートラクションで正確な広い剝離面を展開し,安全,確実で無駄のない手術である.手術の技術は「みて学べ」という教育が浸透しており,開腹手術が主流であった時代には,多くの研修医が手術台を取り囲んだ.2000年以降は,武藤徹一郎先生(元大腸癌研究会会長,当院メディカルディレクター),山口俊晴先生(当院院長)により,キャンサーボードをはじめとする臓器別チーム医療の徹底や,低侵襲をめざした腹腔鏡手術の導入など,新たな改革がなされた.2005年に江東区有明に移転し「がん研有明病院」と改名したのを契機に,さらにこれらの改革が加速し,現在にいたっている.
現在,消化器外科は,食道外科・胃外科・肝胆膵外科・大腸外科の4つの部門があり,それぞれが,消化器内科(内視鏡・化学療法)・病理・放射線治療科などと臓器別の診療グループを形成している.これらすべてを統括するのが,消化器センター(佐野武センター長)である.
大腸外科の特徴としては,年間の初発大腸癌手術件数が700例以上と日本一であり,その95%以上を腹腔鏡で施行し,腹腔鏡手術症例数も国内最多である.また,高度進行下部直腸癌や,多発の肝転移を伴う大腸癌,骨盤内再発例など治療困難例も多く紹介されるため,集学的治療が必要となる症例も多い.このためレジデントは,詳細な診断(ステージングはもちろん,化学療法の治療歴,正確な解剖の把握など),正しい治療計画(どの程度のエビデンスに基づく治療を選択しているか,治療の利点および欠点など),手術術式および術後管理の計画(予測される治療成績,合併症,個々の症例での特殊性や注意点)など,すべてに習熟する必要がある.
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