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は じ め に
人工股関節全置換術(THA)において,術後の脱臼,可動域制限,摺動面摩耗,無菌性弛みなどの合併症の予防においては,至適角度でカップを設置することが求められる1,2).そのため,近年では多くの施設でカップ設置精度の向上を目的に,種々のナビゲーションシステムが導入されている3,4).2021年度のレジストリー調査では,初回THAのナビゲーション使用率は全体の22.7%であったが,2023年度では31.9%と増加している5,6).特に術前CTが不要であるポータブルナビゲーションシステムが8.6%(2021年度)から17.4%(2023年度)と増加しており,比較的低コストで導入可能なデバイスの需要が高まっていると考えられる.一方で,現在THAで使用可能なポータブルナビゲーションの多くが骨盤にピンを挿入する必要があり,手術時間の延長や追加侵襲の懸念がある7).
当科では,Ogawaらが骨盤座標取得の方法として利用したスマートフォンの拡張現実(augmented reality:AR)機能を採用し8),新たに開発されたポータブルナビゲーションシステムである,Ortho Panther(シェルハメディカル社)を2021年から導入を開始した.Ortho Pantherはほかのポータブルナビゲーションと異なり,骨盤へのピン挿入を必要とせずナビゲーションのための追加侵襲が不要な点が特徴である.開発当初は仰臥位THAでのみ使用可能であったが,2024年に側臥位THAで使用可能な “Ortho Panther Lateral” が開発された.本稿では,Ortho Panther Lateralの使用方法と,その有用性,課題,今後の展望について述べる.

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