Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
- サイト内被引用 Cited by
は じ め に
成人脊柱変形(adult spinal deformity:ASD)は,成人期における脊椎アライメントの悪化を特徴とする疾患である.本疾患は,変性変化,椎体骨折,特発性側弯症の進行,あるいは脊椎手術後の状態など,さまざまな要因によって発生する.近年の研究により,ASDが健康関連の生活の質(HRQOL)に悪影響を及ぼすことが明らかになっている1~3).特に重度の変形を有する患者では,手術療法が非手術療法と比較して,より良好なHRQOLの結果をもたらすことが示されている4).しかしながら,手術には高い合併症率が伴い,再手術率は最大で47%に達することが報告されている5,6).また,再手術率は手術後の長期経過観察を経ても増加する可能性がある.主要な合併症は,生活の質(QOL)スコアの低下を招き,結果として臨床転帰を悪化させることが報告されている7).そのため,合併症の予防は良好な臨床結果を達成するうえできわめて重要である.
手術に関連する合併症は,一般的に周術期合併症と後期合併症に分類される.周術期合併症には,スクリューの誤配置,硬膜外血腫,重度の貧血などが含まれ,通常は手術中または術直後に発生する8,9).一方,後期合併症は術後1ヵ月以降に発生し,主に持続的な機械的ストレスが原因となる.このストレスはインプラントや椎体の破壊を引き起こし,近位接合部後弯(proximal junctional kyphosis:PJK),遠位接合部後弯(distal junctional kyphosis:DJK),偽関節,ロッド破損,椎体骨折といった「機械的合併症(MC)」として定義される6,10~12).
術後の胸椎後弯(TK),sagittal vertical axis(SVA),仙骨傾斜(sacral slope:SS)など,MCに関連する複数の術後パラメータが報告されている6,13~15).また,骨盤入射角(PI)と腰椎前弯(LL)の差によって評価される脊椎骨盤のバランスは,良好な術後HRQOLを予測するための重要な要素とされている2,10).さらに,近年では「グローバルアライメントとプロポーション(GAP)スコア」という新しい手法がMCの予測に用いられるようになっている11).しかし,これらの研究で報告されたMCの危険因子は一貫しておらず,現時点でその因子は確立されていない.
これまでの研究では,ASD矯正手術におけるMCとその危険因子が調査されているが,それらの研究の多くは平均年齢50~60歳の比較的若年層を対象としていた10,11,16).しかし,高齢化社会がすすむ中で,高齢患者のHRQOLの重要性が認識されてきており,高齢患者を含むASDの管理は脊椎疾患領域における最重要課題の一つとなっている.本研究は,多施設共同研究として,比較的高齢の日本人ASD患者(202症例,平均年齢72.2歳)を対象に矯正手術後のMCおよびその予測因子について検討した.

© Nankodo Co., Ltd., 2025