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は じ め に
橈骨遠位端骨折は日常でよく遭遇する骨折の一つであり,小児~高齢者の幅広い年代に発生する.国内の橈骨遠位端骨折の発生率は人口1万人あたり10.9~14人とされており,女性は男性の約3倍多く発生している1).発生には骨粗鬆症がかかわっていることはいうまでもないが,気候やスポーツも発生に影響を与える2).当科で行った調査でも橈骨遠位端骨折は骨粗鬆症が始まるとされる50歳以降の女性に多く発生しており,特に積雪のある地域の冬季で発生数が増加していた2).また,ほかの調査でも50歳以上の橈骨遠位端骨折例は骨粗鬆症の有病率が73%と高い割合を有しており,さらに90%の例で橈骨遠位端骨折が初発骨折となっていた3).
橈骨遠位端骨折は脆弱性骨折の初発骨折であるとされており4),骨粗鬆症の治療を行わないままでいると脊椎骨折や大腿骨近位部骨折といった生命予後に影響する二次骨折のリスクを増大させる5).そのため,橈骨遠位端骨折後に骨粗鬆症の治療を行うことに対する需要が高まっている.しかし,われわれ整形外科医はいかに骨折を治療するかに集中するあまり,橈骨遠位端骨折後患者に対して骨粗鬆症の評価や治療を十分に行えていないことが報告されている6).当科においても介入前までは橈骨遠位端骨折後患者の骨密度検査率は32%,そのうち骨粗鬆症と診断された患者に対する治療導入率は51%となっており,骨粗鬆症の有病率が高いにもかかわらず,骨粗鬆症の検査も治療も十分に行き届いていない状態であった3).骨粗鬆症の治療率を上げるためには整形外科医の意識改革が必要であり,骨粗鬆症リエゾンサービスの導入や骨粗鬆症に介入できる診療体制をつくることが求められる7).
そこで当科では適切に骨粗鬆症の治療介入ができる外来診療体制を構築するために,診療プロトコルを作成して多施設前向き研究による介入に取り組んでいる.本稿の目的は,診療プロトコル導入前の橈骨遠位端骨折後患者に対してアンケート調査を行い,骨粗鬆症への介入状況と二次骨折の発生について検討すること,および診療プロトコルを用いた治療介入による多施設前向き研究の短期成績について報告することである.
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