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は じ め に
関節リウマチ(RA)治療において2013年よりヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬が使用できるようになった.JAKは細胞内でサイトカイン受容体に結合しサイトカインによるシグナル伝達に関与しており,JAK1,JAK2,JAK3,TYK2の4種類が知られている.JAK阻害薬はJAKに結合することにより,サイトカインによるシグナル伝達を阻害することで作用する1).2016年の欧州リウマチ学会(EULAR)のrecommendationではphase1で治療効果が得られない場合に,phase2で生物学的製剤に並びJAK阻害薬の使用を提示するようになり,RA治療にJAK阻害薬が使用され頻度が増えつつある2).そのためJAK阻害薬使用中に整形外科手術を受けるRA患者も増加傾向にある.JAK阻害薬は生体防御機構にかかわるサイトカインの下流シグナル伝達を阻害するため,JAK阻害薬使用中の整形外科術後患者に免疫抑制による悪影響が懸念される1).しかしながらJAK阻害薬使用中のRA整形外科術後合併症における報告は少ない.またIL-6受容体モノクローナル抗体であるトシリズマブ(TCZ)使用中のRA整形外科術後に体温上昇やCRP・白血球数の上昇といった術後感染の早期指標の変化が抑制されると報告されている3).JAK阻害薬はIL-6によるシグナル伝達を下流で阻害することからこれらの指標への影響も懸念されるが,この影響を明らかにした報告はない.
本研究ではJAK阻害薬であるトファシチニブ(TOF)使用中にRAの整形外科手術を受けた患者において,術後の創部感染・創部癒合不全の有無,体温やCRP・白血球分画の変化を,TCZ使用中にRAの整形外科手術を受けた患者と比較して調査した.
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