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は じ め に
関節リウマチ(RA)は21世紀になって診断と治療の技術が急速に進歩し,早期診断と強力な薬物治療により炎症をコントロールできるようになってきた.ところがRAの手術的治療の件数を検証すると,整形外科医が担う機能再建に対する需要は決して減少していないことがわかる1).生物学的製剤登場以前は荷重関節に対する日常生活動作(ADL)向上を目的とした手術がほとんどであったが,現在では非荷重関節におけるinstrumental ADL(IADL)向上をめざした人工関節や,手足の小関節に対する生活の質(QOL)向上をめざした手術が施行されるようになってきた2).RAは小関節,特に手指もしくは手関節から発症することが多く,罹患期間が長期になりやすいため,上肢の症状が進行しやすい1).上肢の関節破壊と変形がすすむと日常生活に支障をきたすことから,適切な時期に適切な治療を施すことが重要であるが,ガイドラインに沿った診断や治療を行っても上肢の変形や機能障害は経時的に悪化することがわかってきた3).
RAによる手指の変形はリウマチ手といわれ,母指変形とスワンネック変形やボタン穴変形といった手指変形,尺側偏位に分けられる.骨・関節・筋・靱帯・腱・皮膚など多彩な組織の障害が混在するため,評価と治療がむずかしい.非常に複雑な病態をもつリウマチ手変形を,機能に応じて評価することが重要である.そのためにはまず手の変形と機能の評価を適切かつ正確に行う必要がある.
さらにつまみ,握り,書字や洗顔といったさまざまなADLの機能障害が生じるリウマチ手の手術は成績が安定せず,かつては外科医にとっても自信をもってすすめられる治療ではなかった.これはRAによって変形が生じる機序の理解が不十分で,変形の矯正が解剖学的あるいは合理的に行われていなかったことが原因と考えられる.RAによる関節障害の評価と変形の機序を今一度見直し,それらに基づいた変形矯正を行って治療成績を改善する必要がある4).適切な手術的治療を行うためには,上肢の解剖学的構造や変形の機序に精通し,状態に応じた最適な術式を選択する必要がある.本稿では,RAによる関節障害に対する手術的治療,特に関節温存手術など,脚光を浴びているリウマチ手に対する新しい手術戦略について解説する.
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