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は じ め に
人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:THA)で用いられる前方アプローチ(direct anterior approach:DAA)は股関節進入路における真の筋間および神経間アプローチである1,2).そのため,術後の低い脱臼率と術後疼痛の軽減,入院期間とリハビリテーション期間の短縮といった日常生活への早期回復が期待できる1,2).さらには,仰臥位で手術を行うため術中透視を用いることが容易であり,正確なインプラント設置が可能である3).また,神経間アプローチであるため展開を上下に拡大しても温存した筋肉が脱神経になるリスクは少ないため,高度変形例や再置換例といった特殊な症例への対応も可能である4,5).
しかしながら,DAA-THAには多くの利点が報告されている一方で,セメントレスステムを使用した場合は,後方アプローチや側方アプローチといったアプローチと比べて術後早期のステムの弛みや骨折といった大腿骨側の合併症が多いとの報告がある6,7).術後早期のインプラント周囲骨折に関してはアプローチだけの問題ではなく,インプラント選択,大腿骨形状やステムアライメント,性別,年齢,body mass index(BMI)の要因によってリスクが高くなると報告されている8~10).また,DAA-THAのステム側における早期合併症も懸念される問題である.
われわれはDAA-THAの多くのメリットを最大限に活かし,大腿骨側の早期合併症のリスクを最小限におさえるため,セメントステムを主に使用して手術を行っている.さらに,軟部組織温存をめざした低侵襲かつ安定した術野を確保するため,専用の特殊牽引台を使用している.本研究の目的はセメントステムを用いた特殊牽引台を使用したDAA-THAの術後成績を検討することである.
© Nankodo Co., Ltd., 2023