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は じ め に
人工股関節全置換術(THA)における寛骨臼側インプラント設置には摩耗や脱臼を防ぐために,正確な設置角度が要求される.
以前は術者の経験,メカニカルガイドでインプラント設置を行っていたが,目標設置角より大きな誤差を生じている症例も散見された.近年,CT-basedナビゲーションが登場したことで,正確なインプラント設置が可能になったが,大型で高価な機器であり手技が煩雑であるために使用できる病院,医師は限定される.一方,最近になり登場したポータブルナビゲーション,いわゆる “簡易ナビ” は小型で安価な機器であり,手技が容易で汎用性が高く,多くの病院で採用され始めている.当院では重力加速度計を備えた簡易ポータブルナビゲーション(HipAlign:Zimmer Biomet社)を使用している(図1).本器は術前CTを必要とせず,手術中に両側上前腸骨棘と恥骨結合をレジストレーションするだけで外方開角(radiographic inclination:RI)と前方開角(radiographic anteversion:RA),骨盤傾斜,pelvic rotationの計測をリアルタイムで行うことができる.しかし,重力加速度計を用いてfunctional pelvic plane(FPP)を作成するがゆえに,RA,RIの計測誤差を生じている可能性がある.つまり,仰臥位THAではCT撮影テーブルより手術テーブルが軟らかいためにsacral slope(SS)が術中と術後で同等でないと推測される.さらに,仙腸関節に可動性がないと仮定すれば,SSと骨盤傾斜は相関するため(図2),術後設置角計測時の骨盤傾斜に基づくFPPは術中骨盤傾斜に基づくFPPと異なる可能性がある(図3).したがって,術後FPPを基準とするカップ設置角計測では術中とSSが異なるため誤差が生じる可能性がある.このSS変化の影響を受けるため,設置角度精度が落ちる理由なのではないかとわれわれは考えた.そこで,われわれはこのSS変化によりHipAlignの設置角度誤差が生じると仮説を立てHipAlignの設置角精度誤差とSS変化量すなわちFPP変化量と誤差の関係を調査し,HipAlignの設置角度誤差の原因を検討したので報告する.
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