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は じ め に
現在,わが国の掲げる政策の一つである医師労働時間短縮計画に沿って医療機関管理者,医療機関全体として医師の働き方改革がすすめられている1).今後,手術スタッフの確保が以前に比べ,むずかしくなることが想定され,少ない手術人員かつ限られた時間内で従来どおりの手術を強いられる状況が推測される.しかし,単純な手術人員の削減は,正確な術中操作を困難とし,優れた治療成績と患者の安全性を確保することができなくなり,手術の質を低下させるだけでなく,術者の教育や指導をすることさえも困難となる.
近年,最小侵襲手術(minimally invasive surgery:MIS)を目的とし,前方アプローチによる人工股関節置換術(THA)など仰臥位手術を中心に種々のレトラクターや牽引台といった手術支援デバイスが使用2)され,脊椎外科においても側方進入腰椎椎体間固定術(XLIF)が側臥位で専用開窓器を使用3)し,少人数で手術を行うことを可能としている.われわれは,側臥位THAにおいても,従来複数人で行っていたTHAを,2人で行うことができるようにCondor GoldLine Multifunctional Retractor Systems(Condor Medical Technik社)[Gold-line]を創意工夫し,導入した4).
Gold-lineは,手術ベッドサイドのレールに固定し,レバー操作で瞬時に手術野を展開することが可能である.特徴としては,整形外科以外の診療科も使用可能であり,さまざまなレトラクターに装着できる汎用性の高さと着脱がスムーズに行えることである(図1).Gold-lineは,一定の位置で鉤を持続して保持できるため,介助者が移植骨の準備やTHAにおけるセメントの準備の間に術者一人で視野を維持し,手術を進行することが可能である.
われわれは,これまでGold-lineを使用したTHAを2名で200例以上経験し,本稿ではGold-lineの使用方法,導入初期より1年間にGold-lineを使用した寛骨臼形成不全性股関節症におけるTHAの短期治療成績,Gold-line使用による術者間バイアスの比較・検討を目的とした検証を行ったので報告する.
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