Japanese
English
人工関節における進歩 Ⅷ.合併症対策
5.トルニオノーシス
トルニオンの腐食と摩耗
-――トルニオノーシス発生因子
Trunnion corrosion and wear:factors associated with trunnionosis
石井 聖也
1
,
本間 康弘
1
,
松川 岳久
2,3
,
馬場 智規
1
,
金子 和夫
1
,
石島 旨章
1
S. Ishii
1
,
Y. Homma
1
,
T. Matsukawa
2,3
,
T. Baba
1
,
K. Kaneko
1
,
M. Ishijima
1
1順天堂大学整形外科学講座
2順天堂大学衛生学・公衆衛生学講座
3順天堂大学法医学講座
1Dept. of Orthop., Juntendo University School of Medicine, Tokyo
キーワード:
THA
,
trunnionosis
,
cobaltism
,
cobalt chromium head
Keyword:
THA
,
trunnionosis
,
cobaltism
,
cobalt chromium head
pp.218-225
発行日 2023年4月25日
Published Date 2023/4/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei83_218
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
- サイト内被引用 Cited by
は じ め に
19世紀に全身麻酔,無菌手術が世界中に広まったことで体内埋込型医療機器(インプラント)開発は大きく発展した.開発当初はさまざまな金属の使用が試みられ,銀,銅,鉄といった金属が使用されたが生体内で早期に腐食し刺激性,毒性をもつことから実用的にはならなかった1).インプラントに使用される金属は生体内における長期間の化学的,力学的耐久性を兼ね備えることが求められ,その点でコバルトクロム(cobalt chromium:CoCr)は現在も使用されているインプラントに必要不可欠な素材の一つとなっている.CoCrの優れた特性として,高い生体親和性,耐摩耗性,耐腐食性があり1),人工股関節全置換術(THA)では特に摩擦が問題となる骨頭の原料として使用されてきた.しかしながら,CoCr骨頭を用いたTHA後にステム-骨頭嵌合部(トルニオン)の腐食(トルニオノーシス)を生じ再置換術にいたる症例が近年多数報告されている2).また,トルニオノーシスの進行によって金属微粒子の流出,血中コバルト(Co)イオン濃度異常をきたし全身合併症を生じること3)も問題になっている.本稿では,トルニオノーシスの発生因子に関して自験例を交えて文献的考察を行う.
© Nankodo Co., Ltd., 2023