Japanese
English
人工関節における進歩 Ⅶ.インプラント抜去
人工股関節再置換術における合併症対策
-――弛みのないセメントレスステムを安全に抜去する手術手技
Surgical technique to safely remove a cementless stem without loosening
中村 嘉宏
1
,
帖佐 悦男
1
Y. Nakamura
1
,
E. Chosa
1
1宮崎大学整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Fuculty of Medicine, University of Miyazaki, Miyazaki
キーワード:
THA
,
stem removal
,
surgical technique
,
well-fixed stem
,
trunnionosis
Keyword:
THA
,
stem removal
,
surgical technique
,
well-fixed stem
,
trunnionosis
pp.164-170
発行日 2023年4月25日
Published Date 2023/4/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei83_164
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
人工股関節再置換術は手技的難易度が高いばかりか術中予期しない合併症に遭遇することもまれではない.セメントステムの場合,ハンマリングで容易にステム抜去できるがセメントレスステムの抜去はきわめてむずかしいことが多い.人工関節の感染,トルニオノーシスに伴うadverse reaction to metal débris(ARMD),骨頭などのインプラント製造中止,軟部組織緊張低下による易脱臼性というようにさまざまな要因で弛みのないセメントレスステムを抜去しないといけない症例に遭遇する.弛みのないセメントレスステムは骨とステムの間は良好にbone ingrowth/ongrowthが形成されているため既存の抜去手技(薄刃のノミやKirschner鋼線によるステム周囲のdebonding)を十分に行いハンマリングしたとしても抜去できないことも多く,完全なdebondingが得られない状況で無理なハンマリングは大腿骨の破壊的骨折や高度軟部組織損傷にいたることもしばしばである.ステム抜去に関する難易度はステムデザインやステム長・コーティング範囲といったステム側の要素も大きいが,応力遮蔽やbone ingrowthの状態,ステム先端のpedestal signやbracket sign(図1)の有無,cortical hypertrophy,骨脆弱性のX線像の情報を含め評価することが重要である.どのような症例においても同一の手技を行えば,確実に抜去にいたる安定的な手術手技が求められる.本稿では,弛みのないセメントレスステムを安全で確実に抜去できる新しい手術手技をピットフォールとともに紹介する.
© Nankodo Co., Ltd., 2023