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は じ め に
昨今,新型コロナ感染症パンデミックにより,日常的に遺伝子機器が使用されるようになっている.当ゲノム解析センターでは,ウイルス型判別を目的とした全自動next-generation sequencing(NGS)によるゲノム解析法を構築し,変異ウイルスの検出や院内感染時の感染経路特定に使用している1).
整形外科で特に問題となる人工関節周囲感染症(periprosthetic joint infection:PJI)は,無症候性感染や遅発性感染が人工関節弛みに含まれ2),polymerase chain reaction(PCR)やNGSなどの遺伝子検査は従来の培養検査で検出のできないviable but non-culturable(VBNC)を検出することができる3).バイオフィルム感染症は,VBNCである持続生残菌(persister)4)が感染の再燃を繰り返す要因となり,これらを検出できる遺伝子検査が行える意義は大きい.2018年のInternational Consensus Meeting on Periprosthetic Joint Infectionにおける診断ガイドラインは,遺伝子検査を加えた新しい指針を与えており,PJIの診断未確定時はNGSなどの遺伝子検査が必要である5).
近年,薬剤耐性菌(antimicrobial resistance:AMR)の問題は,世界保健機関(World Health Organization:WHO)が掲げる世界的問題として認識され6),広域抗菌薬や抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)薬の使用を最小限におさえる必要がある.当科は,臨床検体における遺伝子検査の課題7~10)をふまえ,定量PCR(qPCR)による細菌定量によるスクリーニング検査と診断を行い,ブドウ球菌やメチシリン耐性遺伝子を迅速に検出するloop-mediated isothermal amplification(LAMP)法や細菌叢の検出にNGSを用いており7~9),広域抗菌薬や抗MRSAによる抗菌薬治療開始後は,遺伝子検査を参考にデ・エスカレーションを行っている.
近年,遺伝子検査のみならず,バイオフィルムの研究がすすみ,バイオフィルム感染症の治療における抗菌薬量は,minimum biofilm eradication concentrationに達成する量が必要とされる11).われわれはantibiotic-loaded acrylic cement(ALAC)に比べて抗菌薬徐放量が多いantibiotic-impregnated bone grafts(AIBGs)12~15)をインプラント周囲感染や慢性骨髄炎の治療に使用し8),現在はPJI治療に従来法12)と併せてAIBGsを用いている.本稿では,遺伝子検査を用いたPJI診断,AIBGsを用いた治療,適性抗菌薬の使用について最新のPJI検査と治療を報告する.
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