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は じ め に
Charnleyがバイオクリーンルームの使用による人工股関節置換術後感染率の低下を報告したのは約60年前である1).その後,感染対策としてCenters for Disease Control and Prevention(CDC)が1982年にガイドラインを発刊し2),1999年にsurgical site infection(SSI)予防ガイドライン3)として発刊された際に日本語に翻訳され,SSIは手術部位感染を訳語としてわが国の医療に定着した.それから約20年の間にわが国における感染予防に対する意識は大きくかわってきた.世界的にはMusculoskeletal Infection Society(MSIS)の整形外科感染対策における第2回国際コンセンサスミーティング(International consensus meeting:ICM)4)が2018年に開催され日本語にも翻訳されている5,6).わが国においては2006年に『骨・関節術後感染予防ガイドライン2015』が整形外科領域のSSI予防ガイドラインとして初刊され,2015年に改訂版が発刊され7),現在の人工関節周囲感染(periprosthetic joint infection:PJI)対策として広く参考にされている.1999年CDCガイドラインでは,剃毛を避けることや,セファゾリン(CEZ)が清潔手術において第一選択の予防抗菌薬であることが推奨されているが,当時われわれが行っていた周術期指示を振り返ると,術前にカミソリで剃毛を行い,術後抗菌薬は経静脈投与を1週間継続した後,さらに2週間の内服投与を行うといったことが一般的に実施されていた.そのため,普段あたりまえと思っている行動や治療を見つめ直してみることは非常に大切なことであると考える.
SSI/PJIの原因菌の由来としては,患者自身の要因など内因性と,手術室環境や医療スタッフの要素など外因性に分類される.内因性,外因性ともに数多くの因子があるが,本稿ではコントロール可能な要因について述べる.
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