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は じ め に
人工膝関節全置換術(TKA)では,より大きな可動域(ROM),日常生活動作(ADL)における十分な安定性と長期的な耐久性が重要である.アジア人の膝は白人の膝とは形態が異なるため,アジア人向けの人工膝関節インプラントの開発は,人種による膝の形状の違いを考慮する必要がある.
当科で日本人向け深屈曲後方安定型(PS)人工膝関節ACTIYAS(京セラメディカル社)[図1]を開発し,2010年11月から臨床応用を行った.日本人の変形性膝関節症患者のCTをもとにコンポーネントのサイズを設計した.Yanagisawaら1)は,このインプラントの大腿骨コンポーネントが,日本人の骨形態のサイズ変化に対して,海外メーカーのインプラントより対応できていることを報告している(図2).ACTIYASはさまざまなデザインの工夫が摺動面になされている(図3).ポスト前面の形状を平坦にして大腿骨ボックス部との前方のインピンジメントを許容すること.スムーズな動きを獲得するために大腿骨前面フランジの張り出しが少なく,インサートの前面に切れ込みをつけて前方軟部組織を緊張させないようにしていること.ポストカムは低い位置で接触し脱臼抵抗性を確保し滑らかな動きと高い回旋自由度を実践し安定性を得ていることである.インプラントの材質においては大腿骨コンポーネントにジルコニアセラミックを使用した.セラミック性の大腿骨コンポーネントとポリエチレンインサートの組み合わせは低摩擦と高い耐久性がシミュレーション試験で示されている.セラミック材料は,一般にコバルトクロム合金の大腿骨コンポーネントに起因する金属アレルギーや過敏症を回避できる利点もある.また金属製と比べてアーティファクトが少なくMRIが鮮明であり,術後の病変を検出することに優れる.ジルコニアセラミックはアルミナセラミックよりも軟らかく,破損のリスクが低い.このような利点を考え,大腿骨コンポーネントにはジルコニアセラミックを選択した.
この新しいPS型人工膝関節ACTIYASのin vivoでの膝関節運動特性を,従来の深屈曲PS型機種と比較したところ,立位,膝立ち上がり,膝立ちの各動作において,インプラントの屈曲角度がACTIYASのほうが大きかった2).大腿骨のロールバックパターンは,ポストカム設計を反映して,従来の膝とは異なっていた.また松村ら3)はACTIYASとほかのPS型機種の術後2年の臨床成績を比較し,膝関節可動域や,ほかの臨床スコアで有意差はなく良好な成績だったことを報告している.しかし中長期的な臨床成績はこれまで報告されていない.本研究の目的はACTIYASの最低5年の中期臨床成績を調査することである.
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