Japanese
English
上肢疾患の診断と治療の進歩(新鮮外傷を除く) Ⅰ.総 論
1.病態・診断
2)動作解析
スマートフォンと機械学習を用いた手根管症候群スクリーニングアプリケーションの開発
Development of carpal tunnel syndrome screening application using smartphones and machine learning
小山 恭史
1
,
杉浦 裕太
2
,
藤田 浩二
3
T. Koyama
1
,
Y. Sugiura
2
,
K. Fujita
3
1東京医科歯科大学大学院整形外科
2慶應義塾大学理工学部情報工学科
3東京医科歯科大学大学院運動器機能形態学講座
1Dept. of Orthop. Surg., Graduate School of Medical and Dental Sciences, Tokyo Medical and Dental University, Tokyo
キーワード:
CTS
,
machine learning
,
smartphone
,
screening
,
thumb
Keyword:
CTS
,
machine learning
,
smartphone
,
screening
,
thumb
pp.21-25
発行日 2022年10月25日
Published Date 2022/10/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei82_21
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
は じ め に
手根管症候群(CTS)では,初期症状として母指~環指のしびれが発症,進行すると母指球萎縮による母指対立障害が生じ,日常動作に支障をきたす1).しかし,病状は緩徐に進行することから,患者は症状の自覚に乏しく,母指球萎縮が進行するまで医療機関の受診が遅れることが多い.重症化すると手術成績や予後は不良となるため2),スクリーニングによる早期診断が重要である.
CTSの診断として,Tinel徴候やPhalenテストといった身体診察や神経伝導検査(NCS)が多く用いられるが,前者は客観性や感度が不十分である点3),後者は機器の準備,煩雑さ,侵襲を伴うという点4)に問題があり,スクリーニングツールとして適さない.手外科医がおらず,NCSの機器もない診療所や小規模病院では,医師の主観で診断が行われることが多く,診断の遅れの一因となっている.
これらの問題点を解決するため,医療の現場でも近年利用されているモバイル端末に着目した.モバイル端末に搭載されているカメラやセンサは小型・高性能化し,ユーザーの状態を計測できるようになったため,身体情報の取得や病気の診断についてのさまざまな研究に用いられている5,6).われわれは,スマートフォンを用いた簡易なゲームにより母指運動を記録するアプリケーション(アプリ)を開発した.さらに,本アプリに機械学習を応用し,CTSのスクリーニングツールとして有用であるか否かを検証した.
© Nankodo Co., Ltd., 2022