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【要 旨】
目 的:手根管症候群(CTS)では母指の運動機能障害をきたすと,手の巧緻性が大きく低下し日常生活動作(ADL)を損なう.しかし,従来の臨床評価ではCTS特有の母指障害を反映できない.そこで本研究では,モーションキャプチャシステムを用いた三次元動作解析により手根管開放術(CTR)前後の母指運動を観察し,CTS治療における運動機能評価としての有用性を検討することを目的とした.
対象および方法:特発性CTSに対してCTRを施行した患者14名の18手,年齢平均67(49~81)歳を対象とした.三次元動作解析では分回し運動を課題動作とし,12台の赤外線カメラを用いたモーションキャプチャシステムで,母指指尖,基節骨,中手骨および手背に貼付した10個の表在反射マーカーの位置座標を計測した.母指指尖の軌跡長,軌跡の囲む面積と手根中手(CM)関節,中手指節(MP)関節,手根間(IP)関節の可動範囲を算出した.さらに臨床評価と母指三次元動態との関連を検討した.評価は術前,術後6ヵ月,1年で行った.
結 果:臨床評価では,IP関節の伸展,親指の掌側/橈側外転可動域,ピンチ力が術後有意に改善した.また,感覚評価,電気生理学的検査,患者立脚型評価においても有意に改善した.三次元動作解析では,術後1年でCM関節の外転・内転,IP関節,MP関節の屈曲・伸展などにおいて関節可動域が有意に改善した.軌跡長および軌跡面積は,術前値と比較して術後1年で有意に改善した.
結 論:三次元運動解析によりCTR後の母指運動機能の改善を評価することができた.CTSにおいて母指の運動を定量化することは,CTSの重症度評価と治療後の母指運動機能評価の両方に有用である.
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