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は じ め に
手根管症候群や肘部管症候群はもっとも頻度の高い上肢の絞扼性神経障害である.絞扼性神経障害の病態として,絞扼部での神経の圧迫と伸長が障害の原因となることが多くの先行研究で明らかとなった.手根管症候群や肘部管症候群の患者では,手根管内や肘部管内の圧が有意に上昇していることが報告されている1,2).また,肘部管症候群患者では肘関節や肩関節運動によって,尺骨神経に伸長ストレスが生じるとされる3).動物実験では12%以上の神経の伸長で神経障害が生じることが報告されている4).
末梢神経の伸長率を評価した研究はいくつか報告されており,未固定凍結遺体を用いた研究では,正中神経は手関節や肘関節の背屈伸展運動,肩関節の外転運動などによって伸長し,遠位に移動するとされる5,6).一方,多くの研究では,神経伸長率の評価を実際の絞扼部位より遠位部や近位部の測定結果に基づいて行っている.絞扼部位で神経の伸長を直接測定するためには,手根管や肘部管を開放して測定機器を装着する必要がある.また,手根管や肘部管は関節部に一致しており,関節の動きに伴い神経は弯曲して走行をするため,機器を用いた神経伸長の測定が困難となる.このことが,神経絞扼部で神経伸長の測定を困難としていた理由と考える.
新しい伸縮性ひずみセンサであるC-STRETCH(バンドー化学社,神戸)は,測定部位が伸縮性バンド様の形態となっており,静電容量値を用いて微小な伸長距離を正確に測定することが可能である7).われわれはこのセンサを足関節不安定性の評価に使用し,その有用性を報告した8).この伸縮性ひずみセンサは薄く柔軟性があるため手根管内に挿入可能であり,手根管内の正中神経の伸長率を定量的に評価できる可能性がある.また,手関節の動きに伴い弯曲して走行する正中神経の伸長率の測定も可能であると考える.
本研究では未固定凍結遺体を使用して,手関節背屈運動時における手根管内での正中神経の伸長率を新しい伸縮性ひずみセンサを用いて測定し,その結果を検討した.
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