Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
は じ め に
人工関節周囲感染(periprosthetic joint infection:PJI)は診断に難渋することが多い疾患であり,精度の高い診断方法が必要とされている.近年の人工関節置換術施行数の増加に伴い人工関節再置換術例も増加しており,今後も増加することが想定されている1).人工関節再置換術ではPJIか無菌性弛みかの診断が重要となる.2013年にPJIに関する国際コンセンサス会議(International Consensus Meeting:ICM)が行われ,予防・診断・治療などの多数の項目について,文献をもとに診療に関するさまざまな推奨が提唱された.その際に新しいPJIの診断基準が提唱され2),PJIの確定診断に用いられるようになった.一方で実際の患者にはPJIの診断基準を満たしていないが無菌性弛みに対する治療が奏効せずに,臨床経過からPJIが強く疑われる症例が多く存在する.それらの患者の感染診断には,分子生物学的診断法による関節液マーカーの測定やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による細菌性デオキシリボ核酸(DNA)の増幅と同定の有用性が報告されてきた.2018年の第2回ICMでは診断基準が改定され,スコアリングシステムが導入された3).そのなかで,PJIの確定診断が得られないグレーゾーンの症例については,次世代シーケンサーなどの分子生物学的診断法が補助的な診断として有用であることが記載されている.
本稿では,これまでわれわれが行ってきたリアルタイムPCR法を用いた細菌性DNAの同定によるPJIの診断について,当院におけるPJI診断の精度とその有用性,および今後の展望について論述する.
© Nankodo Co., Ltd., 2022