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は じ め に
人工関節周囲感染(periprosthetic joint infection:PJI)において,原因菌の同定は診断および治療において重要である.原因菌の同定方法としては,細菌培養検査がもっとも一般的な方法であるが,PJI患者のなかには細菌培養検査で細菌が検出されないculture-negative PJI患者が多数存在する.Culture-negative PJIは,PJI全体の7~42.1%と報告されており1,2),そのような症例では,原因菌と原因菌に対する抗菌薬の感受性が不明であるため,感染に対する治療戦略を立てるのがむずかしくなり,実際culture-negative PJIは臨床成績が劣るとの報告がある3).このようにPJI診療において,原因菌の同定は臨床的に大きな意義をもつが,原因菌同定方法に注目した報告は少ない.近年では,culture-negative PJI患者において,細菌性遺伝子をターゲットとしたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法やシーケンサーによる遺伝子診断技術の有用性が報告されるが4,5),現状では限られた施設での研究段階であり,実際のPJI診療への臨床応用にはいたっていない.
増菌培養は,通常の栄養培地では発育が困難な菌や,嫌気性菌などの発育に特殊な環境を要する菌に対して細菌培養検査の感度を上昇する方法として用いられており,PJIの原因菌同定方法としてもその有用性が報告される6).一般的に行われる通常培養との具体的な違いは培地と培養期間であり,通常培養は血液寒天培地を用いて培養後18~24時間で結果判定をするのに対して,増菌培養は栄養価の高い培地を用いてより長時間の培養を行う方法であり,培地や培養条件の工夫により発育しづらい菌種の同定が可能となる7).
これまでわれわれは,PJI診断において増菌培養を用いてきており,通常培養では同定困難であった症例でも原因菌の同定が可能となった症例を認めた.本研究では,当院のPJI診断における増菌培養方法の実際と診断および治療における有用性について報告する.
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