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は じ め に
母指手根中手(carpometacarpal:CM)関節は第1中手骨と大菱形骨が形成する鞍関節の多軸関節であり,屈曲伸展,内転外転,回内を複合的に行うことで母指の対立運動を可能にしており,把持などの粗大動作とピンチなどの巧緻動作の双方で日常生活において重要な役割をはたしている1).
母指CM関節症は,CM関節の関節軟骨が摩耗し,痛みをきたす疾患で,中高年女性に好発する一次性の変形性関節症であり,両側罹患が多いことが知られている2).治療の第一選択は保存的治療であり,外用,内服,注射,装具療法が選択される.保存的治療で十分な効果が得られない場合には手術的治療が行われるが,術式はさまざまである3).
本稿では保存的治療の中でも装具療法に着目する.母指CM関節症に対する装具療法の目的は,不安定になった母指CM関節を制動して可動域を制限し,局所安静効果により痛みを軽減することである3).装具を使用すると必然的に母指CM関節の可動域が減少し,対立動作を制限することになる.結果として患者は日常生活での不便を訴えることが多い.
母指CM関節症の装具は,生活の妨げにならないようさまざまな素材や形状が使用されているが,大きく分けてプラスチック製の硬性装具と布などを組み合わせた軟性装具がある4,5).硬性装具は固定力が強いものの,フィッティングがわるいと疼痛や皮膚トラブルの原因となりうる.一方,軟性装具は比較的良好なフィッティングを得やすいが,固定力が不十分であることが多い.
われわれはクロロプレンゴム(ネオプレン)製装具を用いてカスタムメイドCM関節軟性装具を作製した6).ネオプレンはウェットスーツなどで使用されるゴム素材で,適度な柔軟性と固定性があり,立体的なカスタムメイドもしやすい.さらに,耐水性も備えている.適度な固定性は保ちながら,既製品よりもフィッティングに優れた装具が治療に有用であるか否かを検討した.
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