母指手根中手関節症の評価とリハビリテーション

Evaluation and rehabilitation of thumb carpometacarpal joint arthritis

は じ め に

　母指手根中手（carpometacarpal：CM）関節症によって生じるつまみ動作や把持動作の著しい制限は，日常生活のさまざまな場面で支障をきたす．わが国では社会の高齢化，生活様式の変遷から母指CM関節部の疼痛を訴えて来院する患者が増加しており^1），リハビリテーション処方が多い疾患の一つである．

　母指CM関節症の治療の第一選択は装具療法や，日常生活での活動を調整し，母指CM関節の安静を保つ保存的治療である．保存的治療が無効な症例は，関節固定術や関節形成術のような手術的治療の適応となる^2）．当院ではMini-TightRope（Arthrex社，Naples）を用いたsuture-button suspensionplasty（SBS）を併用した鏡視下大菱形骨部分切除術を施行している^3）．本法は術後早期からリハビリテーションが可能で，低侵襲であるという利点がある．

　母指CM関節症に対する保存的治療やSBS併用鏡視下関節形成術の治療効果を最大限に引き出すためには，疾患特有の専門的な介入に加え，個々の患者が抱える機能障害やニードに着目した評価やリハビリテーションが必要である．

　本稿では，当院で行っている母指CM関節症患者に対するリハビリテーションについて述べる．