肩関節・肩甲帯部疾患 病態・診断・治療の現状 治療 保存的治療と手術的治療の現状
神経障害(副神経麻痺) 副神経麻痺15例の検討 臨床症状とその経時的変化を中心に
池上 博泰
1
,
小川 清久
,
松村 昇
,
小林 修三
,
塩野 将平
,
戸山 芳昭
1慶応義塾大学 整形外科
キーワード:
医原病
,
筋萎縮症
,
筋電図
,
MRI
,
術後合併症
,
リンパ節郭清
,
副神経疾患
,
僧帽筋
,
神経縫合術
Keyword:
Electromyography
,
Iatrogenic Disease
,
Magnetic Resonance Imaging
,
Lymph Node Excision
,
Muscular Atrophy
,
Postoperative Complications
,
Accessory Nerve Diseases
,
Superficial Back Muscles
pp.162-166
発行日 2010年10月25日
Published Date 2010/10/25
DOI https://doi.org/10.15106/J04037.2011097710
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当科で1988~2008年に治療した副神経麻痺15例を対象に、麻痺の原因、治療方法、臨床症状と画像所見の経時的変化などについて検討した。男性10例、女性5例、初診時年齢12~74歳、経過観察期間は1~15年であった。麻痺の原因は、医原性と考えられた手術後の麻痺が10例(耳鼻科手術8例、形成外科手術2例)、いわゆる神経痛性筋萎縮症と考えられたものが2例、マッサージ後もしくは少林寺拳法後に発生した圧迫が原因と思われたものが2例、ガラス板を運んでいて切創により発生したものが1例であった。医原性の2例と切創による1例には神経縫合術を行い、術後6ヵ月~1年でほぼ回復した。耳鼻科領域の悪性腫瘍でリンパ節広範切除後に麻痺を生じた2例では鎖骨近位端骨折後偽関節となり、Henry法に準じた肩甲骨固定術を併用した偽関節手術を行った。残りの10例は経過観察のみ行った。このうち圧迫によって生じた症例では経過とともに筋萎縮とMRI上の輝度変化は改善したが、3年以上経過しても健側との差を認め、医原性の症例では僧帽筋の萎縮に変化はなかったものの肩甲挙筋と菱形筋が代償性に肥大して外観上の非対称性が著明に改善した。
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